2011年5月21日土曜日

半藤他「昭和陸海軍の失敗」再読です

この2カ月ほど忙しすぎてゴールデンウィークも家に居ながら仕事をしているぐらいでした。
当然ブログにも手が出ず、昨日やっとひと山越えたので、ちょっとブログを更新します。

昨夜、寝ようかなと思って、久々に手にとって、引き込まれて2時間で読み終わってしまった本です。この本で展開される理論やみ方がすべてではないという前提で、日本の組織でどこでも起こりうる問題点を指摘している点で本書は評価できると思う。かつて日清・日露の両戦争の成功体験を超克できないという問題点は、どの組織も包含する大きな問題といえる。

私の勤務先の営業部隊がその典型であるという気持ちを強く持った。戦後バブルが崩壊するまでは基本的には右肩上がりの経済で、インフレ傾向にあったので、短期的な業績の変化はあったけど、1~2年のスパンで考えると、放っておいても成長したわけである。加えて、情報の非対称性に至っては、商社が持つ情報量は圧倒的で、当時のお客さんたちが得られる情報量は日本経済新聞や業界紙の範囲内で、為替や金利の情報なんて全然入らなかった。

いま会社を経営する役員各位は、そういういい時代に担当者や課長として業績をあげてきた。だから、その時代のの成功体験でいま起きている現象をを分析して語る。情報や力の圧倒的な差を背景に、時代背景もあって成功できた。しかし今は違う。経済は低成長、デフレ時代に低金利。インターネットやメディアのおかげでどんどん情報の非対称性は解消され、今までのうち手は通用しない

しかし、30年前の「成功」を一所懸命語る。はたしてそれが「成功」だったかも定かではない。なぜならば高金利・インフレ時代のマージンと今のマージンを比較できるのかすら理解できないままに成功を語る経営者。論理的に説明しても、「新規開拓が足りない」ですと。何かおかしいですよね。小職は社会人になってから大学院を出たわけだが、そういう理論は「机上の空論」として片付けられる。投資効果について普通に説明するが、「この商売で回収できればええんや」と旧態依然の回収期間法を振り回し、エマージングマーケットに投資したがる人。これも結局は今までの成功体験の延長戦で話しているにすぎない。

今の大震災対応でも垣間見られるこの思考、自分の成功体験を打ち破ることの難しさ、本当に感じますね。特に最後の「敵は米国より陸軍」。同じことが会社でも起こっています。

半藤一利、秦郁彦、平間洋一ほか(2007)『昭和陸海軍の失敗-彼らはなぜ国家を破滅の淵に追いやったのか』文藝春秋

第1部 昭和の陸軍 日本型組織の失敗
1 派閥抗争が改革をつぶした -宇垣一成と荒木貞夫
2 エリート教育システムの欠陥 -東條英機と永田鉄山
3 天才戦略家の光と影 - 石原莞爾と武藤章
4 良識派は出世できない - 栗林忠道、今井均、本間雅晴
5 暴走する参謀コンビの無責任 - 服部卓四郎と辻正信
6 凡庸なリーダーと下剋上の論理 - 杉山元と瀬島龍三
7 「空気」に支配された集団 - 阿南惟幾と梅津美次郎

第2部 昭和の海軍 エリート集団の栄光と失墜
1 成功体験の驕りと呪縛 - 東郷平八郎と加藤友三郎
2 人事を牛耳る皇族総長 - 伏見宮博恭宮
3 良識派は孤立する - 米内光政と井上成美
4 必敗の日米開戦をなぜ? - 永野修身と嶋田繁太郎
5 真珠湾とミッドウェーの錯誤 - 山本五十六
6 戦艦大和とゼロ戦 - ソニー、松下への遺産
7 敵は米国より陸軍 - 貴族主義とムラの論理

隷属への道(ハイエク)再読

先月シアトルに行った時のブログが下書きのままでした。情けなし・・・・。
あっぷします。ごめんなさい。

先週シアトルに行っていました。

持っていったのはこの1冊。Hayek, F., A. (1943) The Road to Serfdom. Chicago: University of Chicago Press. 邦訳 F・A・ハイエク(2008)『隷属への道』西山千明、春秋社である。寝るための睡眠薬だったのですが、一種の覚せい剤でした。震災のこれからの復興に示唆になると思います。適正な誘因(インセンティブ)とはなにか。いま、我々に求められるのは何か。それは魔女狩りのようなファナティックなリアクションではないはずである。東電を非難することは簡単だが、あなたならどうするか。電気料金値上げなしにやっていけるのだろうか。ツイッター上で電気料金の値上げの話を大学の先生としました。私の値上げ論に対して先生は、市場経済は時間を取り扱うのがうまくないから、すぐに解決しそうなら解決方法としてはいかがか、という話をされた。しかし、この問題はおそらく10年は続く。とすると、電気料金の値上げしかおそらく対応の方法はないと思うがどうだろうか。


すこし違うところに話が行きましたが、一読をお勧めします。

目次

1994年版序文 ミルトン・フリードマン
序章
第1章 見捨てられた道
第2章 偉大なユートピア
第3章 個人主義と集産主義
第4章 計画の「不可避性」
第5章 計画化と民主主義
第6章 計画化と「法の支配」
第7章 経済統制と全体主義
第8章 誰が、誰を?
第9章 保障と自由
第10章 なぜ最悪の者が指導者となるのか
第11章 真実の終わり
第12章 ナチズムの基礎としての社会主義
第13章 我々の中の全体主義者
第14章 物質的条件と道徳的理想
第15章 国際秩序の今後の展望
結び
原注・参考文献
初版まえがき
1976年版へのまえがき
訳者あとがきにかえて