震災前に会社の資料を探しに行った三省堂で経済学のコーナーで見つけた本です。これが分かりやすい。中村真幸、石黒真吾編(2010)『比較制度分析・入門』有斐閣です。帯に「ゲーム理論と契約理論を用いると社会はどのように読み解けるのか」とあります。比較制度分析で最初に日本人としてノーベル経済学賞をとるであろう青木昌彦が巻頭を飾り、伊藤秀史が契約理論について、あとは若手中心に新進気鋭の研究者たちが執筆した豪華本です。
はしがきは学部生を念頭に書かれています。さすがに経済学の本ですから数式が出てきますが、丁寧に自分で式を書き起こしていけば、経済学に遠ざかっていた実務家でもなんとかついていける内容です。取引費用からゲーム理論、そして所有権理論に至るまでのいわゆる比較制度分析の知見を、分かりやすく、かつ学術的なレベルを落とさず説明していますし、不完備契約も非常によく理解できます。
実務家なら各論が大切と思われると思います。その点では、人事制度を構築しようとしている担当者なら、内部労働市場、選抜理論、補完性、情報の非対称性、マルチタスク問題などの知見が不可欠で、そのあたりはしっかりと網羅されています。垂直統合についても自動車産業の例でしっかり説明されていますし、いま一番ホットなコーポレートガバナンスについてもコーポレートガバナンスや取締役会の視点から書かれています。
それでは各論を理解するための理論の説明はどうか。ゲーム理論と契約理論を中心に非常にレベルの高い説明が展開されていて、実務面でも役立つと思います。
練習問題も豊富で、学部用かもしれませんが、非常に明快な本で感心しました。
目次
はしがき
執筆者紹介
第1部 比較制度分析とは何か 制度の経済学の考え方
第1章 制度とは何か
第2章 組織の経済学
第3章 制度の歴史分析
第2部 制度分析の道具を身につける 経済学的基礎
第4章 ゲーム理論の基礎
第5章 契約の経済理論(1)
第6章 契約の経済理論(2)
第3部 制度を分析する 比較制度分析の応用
第7章 垂直的な企業関係
第8章 産業集積の組織
第9章 現代の内部労働市場
第10章 多次元的な仕事と誘因の制御
第11章 コーポレートファイナンス
第12章 金融システムの歴史分析
第13章 政府間の財政制度
第14章 財政システムの歴史分析
練習問題の解答例
索引
3 件のコメント:
こんにちはm(_ _)m
とおりすがりのpengです。
犬が かわいかったので 立ち止まりました。
春が来たので 明日から 記事アップします。
お立ち寄りいただければ 幸いです。
こんにちは
書籍検索をしている際に、SEATAKUさんのブログを拝見いたしました。
『比較制度分析・入門』は非常にしっかりした内容となっていますが、どうしても理解できない数式となっている部分があります。
SEATAKUさんは、そのような点がありましたでしょうか。出版社から連絡待ちなのですが、よろしければご教示お願いできませんでしょうか。
1年ぶりに再開しましたので、コメントを書くことができませんでした。数式で分からないところはなかったと記憶しています。というか、こういう厳密な本を読むときは、まず最初にさっと2回ぐらい読んでから、数学の解説書を横において精読します。ブログ再開しますので、もう一度これを読もうと思います。
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