たまたま、神戸大学の小川教授にご紹介いただいた本が掛け値なしに面白い。
楠木建(2010)『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』東洋経済新報社
たまたま紀伊国屋で立ち読みしていたら、この本があって、買ってしまいました。電車で読みだしましたが、面白い。語り口も軽妙で、かといって中身も濃いのでぜひ。500ページの大著ですが、読みやすいので読み切りも早いと思います。沼上幹(2009)『経営戦略の思考法:時間展開・相互作用・ダイナミクス』日本経済新聞出版社 につぐ自分にとっての最近のヒットです。
おもにMBAプログラムや論文執筆の過程で読んできた経営学と経済学の書籍、それと経営学を理解するために必須の哲学や社会学についての書籍を読み直しています。その時に読めなくて積読になっていた本も読み進めます。MBAを修了したものの、継続的に学ぶためには、何らかの強制力が必要です。そこで、硬軟織り交ぜてご紹介できればと思います。
2010年4月29日木曜日
2010年4月25日日曜日
同期会
23日に、大阪の某所で神戸MBA2008年入学組でこの3月に修士論文を提出し、晴れてMBAになった同期の慰労会をやり、10名ほど集まりました。MBAの飲み会の決定的にいいところは、何も考えずに付き合えるところです。会社だと会社のしがらみがありますし、親戚はこれまためんどくさい。MBAの仲間は、年齢が離れていても同期で会社の地位とか気にせず飲めるところ、それと会社の話題をする必要がなく、本当にリラックスして飲めるところがいいと感じています。
社会人になって20数年経過し、会社以外の付き合いがどんどん希薄化していく中で、この付き合いは非常に貴重です。こういう人脈を仕事に使おうという人もおられるとは思いますが、私としては、イギリスのカントリークラブのように、「ここでは仕事の話はしない」的なところが気に入っています。
私の所属ゼミには、まだ2名がこの夏に修士論文提出の予定なので、ゼミが続いています。先生にも感謝、同期にも感謝。本当に貴重な頭の体操の機会になっています。こういう学びの継続がもしかするとMBAで得たものかもしれません。
社会人になって20数年経過し、会社以外の付き合いがどんどん希薄化していく中で、この付き合いは非常に貴重です。こういう人脈を仕事に使おうという人もおられるとは思いますが、私としては、イギリスのカントリークラブのように、「ここでは仕事の話はしない」的なところが気に入っています。
私の所属ゼミには、まだ2名がこの夏に修士論文提出の予定なので、ゼミが続いています。先生にも感謝、同期にも感謝。本当に貴重な頭の体操の機会になっています。こういう学びの継続がもしかするとMBAで得たものかもしれません。
オーガニゼーションズ (March & Simon) 読みました
このところ、面接地獄でブログを更新できていませんでした。
なんとか読みましたが、もう一度精読が必要でしょう。手ごわい本でした。
結局、重要なのは、高い勤労意欲は高い生産能力の十分条件ではないし、高い勤労意欲が低い勤労意欲よりも高い生産性を導くとはいえない。よって、勤労意欲と満足という単純な理論では説明できないのである。
・ 満足度が低ければ低いほど代替的プログラムの探索はより多くなる、
・ 探索が多ければ多いほど報酬の期待値はより高くなる
・ 報酬の期待値が高くなればなるほど満足度はより高くなる
・ 報酬の期待値が高くなればなるほど希求水準はより高くなる
・ 希求水準が高くなればなるほど満足度は低くなる
そして、とりうる行動のオプションとして、組織を離れる(満足度が低い)か、組織にとどまって生産するか、組織にとどまるが生産しない(ほかの満足を得る機会がある)のいずれかを選択することができる。
次に、組織に参加する意思決定として:
・ 組織は、組織の参加者と呼ばれる多くの人々の相互に関連した社会的行動の体系
・ 組織から誘因を受け、その見返りとして組織に対して貢献を行う。
・ 提供される誘因が要求されている貢献と等しいかあるいはヨリ大である場合にだけ参加
・ さまざまな集団によって供与される貢献が誘因の源泉
・ 貢献が十分にあって、貢献を引き出すために十分な誘因を供与している限りにおいて組織は存在し続ける。
そして、合理性については:
「人間の知的能力には、個人と組織とが直面する問題の複雑性と比較して限界があるために、合理的行動のために必要となることは、問題の複雑性のすべてをと らえることではなくて、問題の主要な局面のみをとらえた単純化されたモデルをもつことであるとして、この単純化は:
・ 極大化ではなくて、満足化
・ 行為の代替的選択肢と行為の結果は、探索の過程を通じて逐次的に発見される、
・ 組織および個人は、行為のプログラムのレパートリーを形成し、反復的な状況での選択に、これらを代替的選択肢として役立てる、
・ 特定の行為のプログラムのそれぞれが、限定された範囲内の状況と限定された範囲内の結果とに対応している、
・ 行為のプログラムのそれぞれは、他のプログラムとは半独立的に実施されうる、という特徴を持つ
と、まあ難しい本でした。もう少し本気で読んで行きたいと思います。
March, J. G. & Simon, H. A. (1958) Organizations. Hoboken, NJ: John Wiley & Sons. 邦訳 J・G・マーチ、H・A・サイモン(1977)『オーガニゼーションズ』土屋守章訳、ダイヤモンド社.
目次
訳者まえがき
謝辞
第1章 組織内行動
第2章 「古典的」組織理論
第3章 動機的制約―組織内の意思決定
第4章 動機的制約―参加の意思決定
第5章 組織におけるコンフリクト
第6章 合理性に対する認知限界
第7章 組織におけるプランニングと革新
あとがき
参考文献
索引
なんとか読みましたが、もう一度精読が必要でしょう。手ごわい本でした。
結局、重要なのは、高い勤労意欲は高い生産能力の十分条件ではないし、高い勤労意欲が低い勤労意欲よりも高い生産性を導くとはいえない。よって、勤労意欲と満足という単純な理論では説明できないのである。
・ 満足度が低ければ低いほど代替的プログラムの探索はより多くなる、
・ 探索が多ければ多いほど報酬の期待値はより高くなる
・ 報酬の期待値が高くなればなるほど満足度はより高くなる
・ 報酬の期待値が高くなればなるほど希求水準はより高くなる
・ 希求水準が高くなればなるほど満足度は低くなる
そして、とりうる行動のオプションとして、組織を離れる(満足度が低い)か、組織にとどまって生産するか、組織にとどまるが生産しない(ほかの満足を得る機会がある)のいずれかを選択することができる。
次に、組織に参加する意思決定として:
・ 組織は、組織の参加者と呼ばれる多くの人々の相互に関連した社会的行動の体系
・ 組織から誘因を受け、その見返りとして組織に対して貢献を行う。
・ 提供される誘因が要求されている貢献と等しいかあるいはヨリ大である場合にだけ参加
・ さまざまな集団によって供与される貢献が誘因の源泉
・ 貢献が十分にあって、貢献を引き出すために十分な誘因を供与している限りにおいて組織は存在し続ける。
そして、合理性については:
「人間の知的能力には、個人と組織とが直面する問題の複雑性と比較して限界があるために、合理的行動のために必要となることは、問題の複雑性のすべてをと らえることではなくて、問題の主要な局面のみをとらえた単純化されたモデルをもつことであるとして、この単純化は:
・ 極大化ではなくて、満足化
・ 行為の代替的選択肢と行為の結果は、探索の過程を通じて逐次的に発見される、
・ 組織および個人は、行為のプログラムのレパートリーを形成し、反復的な状況での選択に、これらを代替的選択肢として役立てる、
・ 特定の行為のプログラムのそれぞれが、限定された範囲内の状況と限定された範囲内の結果とに対応している、
・ 行為のプログラムのそれぞれは、他のプログラムとは半独立的に実施されうる、という特徴を持つ
と、まあ難しい本でした。もう少し本気で読んで行きたいと思います。
March, J. G. & Simon, H. A. (1958) Organizations. Hoboken, NJ: John Wiley & Sons. 邦訳 J・G・マーチ、H・A・サイモン(1977)『オーガニゼーションズ』土屋守章訳、ダイヤモンド社.
目次
訳者まえがき
謝辞
第1章 組織内行動
第2章 「古典的」組織理論
第3章 動機的制約―組織内の意思決定
第4章 動機的制約―参加の意思決定
第5章 組織におけるコンフリクト
第6章 合理性に対する認知限界
第7章 組織におけるプランニングと革新
あとがき
参考文献
索引
2010年4月4日日曜日
オーガニゼーションズ (March & Simon)
経営行動の次はこれ、といわれているやつです。
March, J. G. & H. A. Simon (1958) Organizations, Hoboken, NJ: John Wiley & Sons. (土屋守章訳『オーガニゼーションズ』ダイヤモンド社)。
絶版になって久しく、本は異常な高さで買えません(笑)。論文を書くときにコピーしていたので、それを読み返してみることとします。先の経営行動もそうだったのですが、翻訳が絶版になってしまい、久しく出ていません。こういう古典を残しておくわけにはいかないのでしょうか?これも大部です。頑張って読みたいと思います。
原書
はまだ売っています。
March, J. G. & H. A. Simon (1958) Organizations, Hoboken, NJ: John Wiley & Sons. (土屋守章訳『オーガニゼーションズ』ダイヤモンド社)。
絶版になって久しく、本は異常な高さで買えません(笑)。論文を書くときにコピーしていたので、それを読み返してみることとします。先の経営行動もそうだったのですが、翻訳が絶版になってしまい、久しく出ていません。こういう古典を残しておくわけにはいかないのでしょうか?これも大部です。頑張って読みたいと思います。
原書
はまだ売っています。
経営行動(Simon)再び(2) やっと読み終わり
仕事が忙しく、細切れで読んでいましたが、やっと読了しました。
意思決定にあたって、全代替的選択肢から一つを選びだす基準としての価値体系を持ち、可能な代替的選択肢を網羅し、各選択肢から生じる結果のすべてを知ることができなければならないが、人間はこういったことを不完全な形でしか実行できない。だから、人間は「限定された合理性(bounded rationality)」を達成できるだけである。しかし、個人の合理性には限界があっても、組織によって克服できるという立場である。目的のハイアラーキー(最近英語ともドイツ語ともつかないヒエラルキーなるカタカナ言葉が横行しているが、正しくはハイアラーキーかヒエラルヒーでしょ?)をどのように構成するかが経営の課題であるということ。そして、目標設定に関しては参加者全員がかかわり、目的実行のために協働が必要である。
まあ、単純に言ってしまうとコミュニケーションに関する本と言ってしまってもよいのだとは思いますが、もっと奥の深い本です。
Simon, H. A. (1997) Administrative Behavior: a Study of Decision-Making Process in Administrative Organizations (4th ed.). New York: Free Press. 邦訳 ハーバート・A・サイモン(2009)『経営行動:経営組織における意思決定過程の研究』二村敏子、桑田耕太郎、高尾義明、西尾暢子、高柳美香訳、ダイヤモンド社.
目次
訳者まえがき
第四版への序文
初版への序文
謝辞
第1章 意思決定と経営組織
第2章 経営理論の若干の問題点
第3章 意思決定における事実と価値
第4章 経営行動における合理性
第5章 経営決定の心理学
第6章 組織の均衡
第7章 権限の役割
第8章 コミュニケーション
第9章 能率の基準
第10章 忠誠心と組織への一体化
第11章 組織の解剖学
付録 経営の科学とは何か
索引
意思決定にあたって、全代替的選択肢から一つを選びだす基準としての価値体系を持ち、可能な代替的選択肢を網羅し、各選択肢から生じる結果のすべてを知ることができなければならないが、人間はこういったことを不完全な形でしか実行できない。だから、人間は「限定された合理性(bounded rationality)」を達成できるだけである。しかし、個人の合理性には限界があっても、組織によって克服できるという立場である。目的のハイアラーキー(最近英語ともドイツ語ともつかないヒエラルキーなるカタカナ言葉が横行しているが、正しくはハイアラーキーかヒエラルヒーでしょ?)をどのように構成するかが経営の課題であるということ。そして、目標設定に関しては参加者全員がかかわり、目的実行のために協働が必要である。
まあ、単純に言ってしまうとコミュニケーションに関する本と言ってしまってもよいのだとは思いますが、もっと奥の深い本です。
Simon, H. A. (1997) Administrative Behavior: a Study of Decision-Making Process in Administrative Organizations (4th ed.). New York: Free Press. 邦訳 ハーバート・A・サイモン(2009)『経営行動:経営組織における意思決定過程の研究』二村敏子、桑田耕太郎、高尾義明、西尾暢子、高柳美香訳、ダイヤモンド社.
目次
訳者まえがき
第四版への序文
初版への序文
謝辞
第1章 意思決定と経営組織
第2章 経営理論の若干の問題点
第3章 意思決定における事実と価値
第4章 経営行動における合理性
第5章 経営決定の心理学
第6章 組織の均衡
第7章 権限の役割
第8章 コミュニケーション
第9章 能率の基準
第10章 忠誠心と組織への一体化
第11章 組織の解剖学
付録 経営の科学とは何か
索引
2010年4月3日土曜日
学生さんと面談
1週間出張でした。
30日は久々に就職活動中の学生さんと会社で「面談」。
いつも通り、「自己成長」のオンパレードです。「自分を成長させたい」、「成長させてくれる会社に就職したい」などなど。
「私は、常にリーダーシップを発揮して、持ち前の行動力と好奇心をもって、新しいことに取り組んで、自分を成長させてきました」
「私の就活の軸は、その会社が自分にとって自己成長できるフィールドを与えてくれるかどうかです」
「御社の企業理念に共感して、こういう会社なら自分も成長できると思って志望しました」
多くの学生の方々は、こんなことを「本気」で言っているのでしょうか?学生の方々が読んでくださっているのであれば、少し考えてほしいのです。こうやって活字にしてしまうと薄っぺらくありませんか?皆さんが必死で就職活動に取り組んでいるのは理解します。何社もエントリーシートを書いて、テストを受けて、面接する。大変な努力と思います。しかし、我々面接をする立場も、「会社の発展のために貢献してくれる人材を採用したい」という思い、それと「40年働いてもらうとして4億の投資になる。それに見合う人物か」という視点でも面接に臨んでいます。
本当にリーダーシップを発揮していましたか?私はこういう学生の方には、「どういったリーダーシップを発揮したのか、どんな小さい例でもいいので発揮した例を教えてください」と問いかけます。この問いには、リーダーシップの種類を問う質問と、その例を問う質問の2つにわかれていますが、リーダーシップの種類を問う質問であることを理解して問いに答える方は稀です。発揮した例も、5W1Hを踏まえて説明する人はほとんどいません。これだと、非常に疑わしいのです。
自分の経験に即して物事を説明できればそれで十分です。幼い自己成長願望は言ってもらっても何の効果もありません。自分が成長すれば会社に貢献できるはずです。会社に貢献できるように努力すれば結果として人間として成長していると思います。
間違ってますかね?
30日は久々に就職活動中の学生さんと会社で「面談」。
いつも通り、「自己成長」のオンパレードです。「自分を成長させたい」、「成長させてくれる会社に就職したい」などなど。
「私は、常にリーダーシップを発揮して、持ち前の行動力と好奇心をもって、新しいことに取り組んで、自分を成長させてきました」
「私の就活の軸は、その会社が自分にとって自己成長できるフィールドを与えてくれるかどうかです」
「御社の企業理念に共感して、こういう会社なら自分も成長できると思って志望しました」
多くの学生の方々は、こんなことを「本気」で言っているのでしょうか?学生の方々が読んでくださっているのであれば、少し考えてほしいのです。こうやって活字にしてしまうと薄っぺらくありませんか?皆さんが必死で就職活動に取り組んでいるのは理解します。何社もエントリーシートを書いて、テストを受けて、面接する。大変な努力と思います。しかし、我々面接をする立場も、「会社の発展のために貢献してくれる人材を採用したい」という思い、それと「40年働いてもらうとして4億の投資になる。それに見合う人物か」という視点でも面接に臨んでいます。
本当にリーダーシップを発揮していましたか?私はこういう学生の方には、「どういったリーダーシップを発揮したのか、どんな小さい例でもいいので発揮した例を教えてください」と問いかけます。この問いには、リーダーシップの種類を問う質問と、その例を問う質問の2つにわかれていますが、リーダーシップの種類を問う質問であることを理解して問いに答える方は稀です。発揮した例も、5W1Hを踏まえて説明する人はほとんどいません。これだと、非常に疑わしいのです。
自分の経験に即して物事を説明できればそれで十分です。幼い自己成長願望は言ってもらっても何の効果もありません。自分が成長すれば会社に貢献できるはずです。会社に貢献できるように努力すれば結果として人間として成長していると思います。
間違ってますかね?
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