2010年5月30日日曜日

ペンクリニックとぶたまん

昨日MBAの同期の結婚披露2次会に行ったことを報告しました。

神戸は六甲から西はトンとご無沙汰で、数年ぶりに昨日行った次第です。
せっかくなので、ちょっと早く出て三宮から高速神戸までぶらぶら歩いていこうと思って、久々に立ち寄ったのが、三宮の「ナガサワ文具センター」。文房具の品ぞろえがいいので、 昔はよく通っていたお店です。すると偶然、長原幸夫さんのペンクリニックをやっていました。次の日(要するに今日30日です)もやっているということで、昔から気になっていた万年筆を持ち込むことにしました。

そして、本日11時ごろに再度ナガサワ文具センターに行くと、「1時半までお待ちいただけますか」とのこと。もちろんここまできて引っ込むわけにはいきませんから、「お待ちします」と申し上げて、食事に出ました。何を食べるか迷いましたが、いつも店の前までは行くのですが行列に恐れをなしてもう20年は食べていない「老祥記」のぶたまんを食べようと思い立ち、南京町まで行くと、行列が! それでも思ったほど待たずに「6こください」。要するに昔風に言うと2皿ですな。540円なんで高いのか安いのかよくわかりません。昔は15こぐらい食べていましたが、さすがにダイエット中の中年おやぢが15こも注文できません。

そして着席して待つこと3分、20年ぶりのご対面、感動でした!やっぱりここのぶたまんには「ソースと辛子」です。ここのぶたまんは味が濃いので、つけなくてもうまいのですが、昔からの長年の深層心理への刷り込みとは恐ろしいもので、おもむろに辛子を小皿にとり、ソースを入れ始めたところで、前の小学生が「おとうさん、肉まんにソースだって、おかしくない?」って関東弁で話すのを聞いて、周りを見ると、圧倒的多数が酢醤油で召し上がっていました。「酢醤油はシュウマイか餃子ちゃうんか!肉まんちゃう、ぶたまんや!ぶたまんはソースやろ!」と叫びたくなりましたが、そんなことを言っても仕方がないので、黙って賞味してきました。ここのぶたまんのうまいのは、なんといっても皮です。いつもこの皮を食べると、神戸はパンがうまいんやもんなぁ~、って全く意味のないことを考えています。

そして、三宮と元町をぶらぶらして、1時半にナガサワに戻ると、順番になっていました。
私が中学生のころに遠い親せきが亡くなった時の形見分けでもらった「白い山」の一番太いやつです。ですから、40~50年は経過しているペンです。書くと引っかかりがきつくてほとんど使わずに置いてありましたが、一度見てもらえばまた使うかもしれないという思いで持ち込みました。「よろしくお願いします」で開口一番、「おぉ、きたね」とおっしゃって、「これはきわものだね」とのこと。「もうだめですか?」と伺ったところ、「いえいえ、こういうペン先の白い山は珍しいから。これは調整しますけど、書き味が今のような書き味にして使えるようにしますから」とのことでした。なにやら、ペン先が刀のようになっていて、ミュージックペン(音符を書くペン)のようになっているそうです。そして、横のペンマニアの方に「これは珍しいでしょ?」といって見せておられました。その方も「こんなペン先ははじめてみました」とのことで、長原さんのお話では前の持ち主が削ったのではないか、もしかしたら音楽関係の方で音符を書かれる人か、などと尋ねられましたので、「いえ、違います」とお答えした次第です。
ぐいぐいペン先を開いて、そして小型グラインダーのようなもので削って、15分ほどで完成しました。「いいですか、こうやってペンをちょっと立てて書くと、横線が太く、縦線が細くなるでしょ?払いや止めがよくわかりませんか?そしてちょっと寝かせると、横線も縦線も細くなるでしょ?こういう書き味です。どうですか」とのことでした。

書いてみて、たった15分のことで感動の書き心地に変身していました。引っかかりが全く消えていて、そして、あまりなれない書き心地ですが、確かにおっしゃるように線の太さが自由自在に変わる不思議なペンです。「もし気に入らなくて中字にしたければいつでもできますから持ってきてください。しかし、これを最初にお持ちだった方を偲ぶのにはこの方がいいと思います。普段使いには別の万年筆で、これは手紙とか特別な用途にお使いになればどうですか?」とのことで、非常にありがたく承りました。

最後に「いやぁ、いいものを拝見しました。楽しかったです」と言っていただけた時は、本当に「こちらこそ本当にありがとうございました」と深々と頭を下げた次第です。長原さんのお人柄がいっぺんにすきになる1日でした。次はペンクリニックの時にセーラーをナガサワで買って、調整に出そうかな、なんて思えます。

いま、改めて試し書きしてみましたが、ぬらぬら~っと書ける書き心地、最高です。こんなに変わるものとは思いもしませんでした。改めて感動!

戦略暴走(三品)について

三品和広(2010)『戦略暴走:ケース179編から学ぶ経営戦略の落とし穴』東洋経済新報社が5月28日に出版され、さっそく購入しました(また小遣いが・・・・)。

短いケースが179も収められています。三品先生もおっしゃっていますが、社内研修の材料として格好であると思います。以前、若手の研修(というか勉強会)にオブザーバーとして参加してくれという依頼があり、日本語のケースを使った研修をやったことがあります。

伊丹先生の『経営戦略の論理』 にも『ケースブック:経営戦略の論理』という副読本があって、16本のケースが紹介されています。そのときには、ここからとったのではありませんが、ケーススタディで深く考えさせるためには、この程度の分量は最低必要と思っていました。そうなると、ケース自体が一般的なサラリーマン受講者にとっては長く、読みこんでくる余裕がないといった不満がありました。

三品先生の本をざっと眺めたところ、ケース一つ一 つは短いので、3本ぐらい一気に取り組ませることができると感じました。しっかりと取り組ませたうえで、どんどん長いケースにも取り組ませることで、ケーススタディからの学びが深くなると感じます。

これも後ほど精読することにします。

MBAの仲間たち

今日は、MBAの同期生の結婚披露2次会があった。同期は約70名ですが、20数名が参加。東京などに散っている仲間を考えれば、半分ぐらい来た勘定になると思う。素晴らしい2次会でした。

今日言いたいことは、MBAで学ぶと、仲間のコムラード意識とでもいうか、戦友とでもいうか、そういう連帯感が強い集団になるということです。神戸の場合、全員が社会人で毎日の仕事に加えて膨大な課題と格闘しています。M1のころは、プロジェクト、授業でのグループ、そしてゼミと、いろいろなグループが形成されている中で協働していく中で、仲間意識が強まります。M2は学位論文に向けて孤独な登攀が続きますが、その中でもゼミの仲間に助けられて山頂を目指します。それぞれの仲間のアプローチは違うかもしれませんが、「場」を共有して同じ目標に向かって走っていくことで、より強い連帯感が生まれるのだと思います。

いつでも年齢や地位を問わず話ができる友人が得られたことは、この年を考えると貴重です。こういう飲み会はいつあっても楽しく、今日は久しぶりにお目にかかる方とも会えて、アンワインドできた1日でした。

2010年5月29日土曜日

「ハーバード白熱教室」(Justice with Michael Sandel)がおもろい!

私は、テレビはNHKを愛用していまして、受信料のもとをとるためにも、民放をみることはあまりありません。というより、NHKの番組の品質が高いので、満足度が高いからです。

周りが、『ハーバード白熱教室』が面白い、と言っていたのですが、日曜日の18:00~19:00ということもあって、いつ見逃していました。先週日曜日みて、衝撃を受けました。おもろい!そこで、オリジナル英語版の『Justice with Michael Sandel』を会社の昼休みなどに毎日のようにみています。

ハーバードで行われている授業のテレビ版なのですが、1000人以上の大教室でインタラクティブな授業を行い、しかも分かりやすい。実は学部が法学部だったので、功利主義や社会契約論のようなことは法哲学でやったのですが実に教え方がうまい。引き込まれていきます。会社でお勧めして、みた人が「何がおもろいねん」というと、ちょっと悲しくなりますが、本当にお勧めです。

またこれも本が出てしまいました。Sandel, M (2009) Justice: What's the Right Thing to Do?, Farrar, Strause & Giroux (鬼澤忍訳『これからの正義の話をしよう:今を生き延びるための哲学』早川書房 
さっそく購入して待機しております!映像見てから読むつもりです。

経営戦略の論理(伊丹)

どんどん時代が古くなっていきますが、次はこれまた日本の経営戦略に関する本の金字塔の1冊、伊丹敬之(2003)『経営戦略の論理 第3版』日本経済新聞社です。

なぜ、こんな本を最近多読しているかというと、経営幹部に対する研修を企画せよ、と経営企画室から難題を持ちかけられたからです。いい機会なので日本の経営学者による日本の経営理論を見つめなおす意味でも、ちょっとしっかりと読んでいます。

といっても、ほかの本を読んでいないわけではありません。もともと何冊か並行して読めるタイプなので、そういう読み方もしています。

戦略不全の論理(三品) 読み終わりました

この本、2年ぶりぐらいに読みましたが、やはり現代日本の経営戦略に関する書籍の代表作の一つとの意を強くしました。

最初、第一部では、とっつきやすいところから始め、売上高と営業利益率、次にコマツとキャタピラーの比較ケーススタディの定性的なアプローチを通じて戦略不全について考えさせる。
第二部では、そしてミクロ経済学の競争モデルをどのように応用するのか、という風に難度が少しずつ上がっていく。そして、売上高と営業利益率にもう一度立ち返って、ケーススタディと言えば定性的になりがちなところをあえて定量的に押さえ、戦略について考えさせる。
そして白眉の第三部。経営戦略がなぜ不全に陥るかの一つの解として、経営者を取り上げる。経営者の任期が戦略に、そして最終的に収益にどのように影響するかについて、三品先生のお考えが定量的な分析を通じて提示されていく。

この本のよさは、最初はとっつきやすく、少しずつ難度が上がっていくところです。ミクロ経済学(ビジネスエコノミクス)や統計学の基礎的な知識があるとさらに読みやすいのですが、そうでなくても読めるようには工夫してあるので、一般的ビジネスマンでも読みこなせます。

この本を読んで感じるのは、 右肩上がりの高度経済成長時代に入社し、キャリア形成期からマネジャー経験を重ねるころまでは、何もしないでも業績が伸びた時代の人物が、この不透明で混沌とした経済状況の中で会社のかじ取りをしていることに対する不安である。第二次世界大戦後、日本の第二の創業期とも言える時代に経営のかじ取りをしていた世代はすでになく、その次の次の世代ぐらいになっており、操業の苦しみは知らず、先人の遺産と環境でマネジャーをつつがなく過ごした経験しかない経営者に何が分かるのだろうか。こういう経営者ほど勉強していないし、MBA教育を否定する。かといって、「持論」をTheory in Practiceともいえるまでの説明力をつけていない。

経営の実際にあたって、基礎的な学問の素養と継続的なブラッシュアップは絶対に必要であると感じる。MBAをそのブラッシュアップのための機会ととらえると、私の場合は本当によかったと思う。

こういう「学び」を否定する人々がかわいそうです・・・。

三品和広(2004)『戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか』東洋経済新報社
目次
はしがき
第1部 戦略不全の実態
第1章 日本企業の戦略不全症
第2章 データに見る戦略不全
第3章 ケースに見る戦略不全

第2部 戦略とは何か
第4章 演繹的マクロ戦略論
第5章 昨日的ミクロ戦略論
第6章 大局的判断の戦略論

第3部 戦略不全の背景と処方箋
第7章 経営戦略の3要件
第8章 日本企業の経営者
第9章 戦略不全の処方箋

参考文献
索引

2010年5月16日日曜日

戦略不全の論理(三品)

次は、少し前に出た本ですが、三品和広(2004)『戦略不全の論理:慢性的な低収益の病からどう抜け出すか』東洋経済新報社を再読します。実はこの本、2004年に出版されたころに買ったのを覚えています(初版でした)。MBA時代にも何度も読んだのですが、最近楠木先生や沼上先生の本を立て続けに読んで、三品先生のお考えをもう一度確認する意味で再読します。 

2010年5月15日土曜日

経営戦略の思考法(沼上)読み終わりました

一気に読みました。再読と言うのもありますが、この本が経営戦略を非常にうまく表現している書だからと思います。

第1部は、ちょっとミンツバーグの戦略サファリに近いところがありますが、非常によくまとまっていて、かつコンパクト。戦略計画、創発理論、ポジショニング、経営資源、ゲーム理論というように、戦略論を5つに大別して説明している。これだけでおそらく元が取れる。
第2部は、私にとっては第8章が素晴らしい。あるものをカテゴリーに分類することで説明しようとするカテゴリー適用法、1つのカテゴリーだけでなく複数の要因で説明しようとする要因列挙法、要因列挙法から因果関係を考察し、行為主体の意図・行為・相互作用結びつけることで解明するメカニズム解明法の思考法について説明されている。この辺は、『行為の経営学』の前半をもっとコンパクトにした感じで、しかも読みやすく仕上がっていると思う。
第3部で、メカニズム解明法に基づいて分析する手法を使って、顧客、競争の活用、シナジー、選択と集中、組織の暴走とを戦略と組織の相互作用としてとらえている。シナジーを正しく理解させ、深い部分で考えさせようとしている姿勢に感銘を受けた。当社においても、シナジーの理解がないままシナジー効果について語られているところに問題があると感じる。

先日『ストーリーとしての競争連略』を読み、改めて本書を読むと、本書はある程度の予備知識がある読者に適当で、ストーリーとしての競争戦略はもっと噛み砕いていることから、より広いオーディエンスを対象とできる。どちらの書も良書と思います。

沼上幹(2009)『経営戦略の思考法―時間展開・相互作用・ダイナミクス』日本経済新聞出版社。
目次
第1部 戦略思考の変遷―経営戦略論の知層形成
第1章 経営戦略に関する5つの考え方
第2章 戦略計画学派
第3章 創発戦略学派
第4章 ポジショニング・ビュー
第5章 リソース・ベースト・ビュー
第6章 ゲーム論的アプローチ
第7章 5つの戦略観がもたらす反省

第2部 戦略思考の解剖―メカニズムの解明
第8章 3つの思考法
第9章 戦略的思考法の具体例―思考法を身につけるための見本例の紹介

第3部 戦略思考の実践
第10章 顧客ダイナミクス
第11章 顧客の声に耳を傾けてはいけないとき
第12章 差別化競争の組織的基礎
第13章 競争を活用する戦略
第14章 先手の連鎖シナリオ
第15章 シナジーの崩壊メカニズム
第16章 選択と集中―創発的多角化戦略の問題点
第17章 組織暴走の理論
エピローグ 経験知と反省的学習
参考文献
人名索引
事項索引

2010年5月13日木曜日

経営戦略の思考法: 時間展開・相互作用・ダイナミクス(沼上)再読します

楠木先生の「ストーリーとしての競争戦略」を読んで、経営書を読んで久々にさわやかな読了感を味わいました。そこで、昨年10月に出版されて即座に買って読んだ沼上先生の本を再読します。

沼上幹(2009)『経営戦略の思考法:時間展開・相互作用・ダイナミクス』日本経済新聞出版社。

本当にこの本も面白い本ですが、楠木先生のアプローチと違うので、再読して、違いを再度分かっておこうと思います。

2010年5月9日日曜日

内田百閒 東海道刈谷驛

今日は、久々に百鬼園先生を読みました。

内田百閒は、私が大学に入ったころに叔父から勧められて読み始めました。漱石最後の弟子ということでも有名です。代表作は「冥途」「阿房列車」や「百鬼園随筆」などですね。イギリスとアメリカの転勤に耐えてうちに残っているのは3冊。全部旺文社文庫の旧かな遣いです。なくなった本を誰に貸したかも覚えていますし、どこかに置いてきたのもほぼ覚えていますが、もう取り返すことはできません。

今日読んだのは、内田百閒(1983)『東海道刈谷驛』旺文社。このなかに「けらまなこ」という話があります。四国に出張に行く阿麻君と二人でお酒を飲んでいる対話風の随筆ですが、これが秀逸です。最初は酔っ払っていないのに、飲むにつれて微妙に酔いが回りだす感じがよく出ている。また、すき焼きの作り方も素敵です。百閒先生の随筆で随所に登場する食べ物とお酒も素敵です。別の本に「おからとシヤムパン」という短編がありますが、シャンパンを飲みだしたのも百閒先生の影響でした。煙草も長らくショートピースを半分でやめるという贅沢な飲み方をしていたのですが、これも百閒先生の影響でした。東海道刈谷駅にも「我が酒歴」というお酒飲み天国のような話もあります。こういう随筆でもタッチが絶妙です。

なお、我が家では、百閒先生の作り方をアレンジしてすき焼きを作っています。調味料は砂糖、醤油、酒だけです。関西式で肉を先に焼いて砂糖と醤油で味付けして、野菜を投入して酒をふんだんにつぎ込む。その後豆腐と糸こんをいれて醤油をかけまわします。酒は料理酒ではだめで、毎日飲む口を用意する。これで作ると本当にうまい。とにかく酒が決め手です。

おためしあれ。

MBAのよさ

私自身は2009年9月に修了したのですが、休学していた関係でこの8月に修論を提出する人がいて、月1回ゼミが継続しています。昨日そのゼミでした。義務(というか恩返し)と思って毎回参加しています。月に1度とはいえ、脳の違う部分を刺激されるので、いつもためになります。仕事で使う頭とは、まったくちがいます。

昨年の今頃の私の修論への取り組みと言えば、先行研究のレビューばかりやっていました。周りは早々と質問紙をすでに配布していたり、インタビューを実行している人もいて、明らかに遅れていたと思います。テーマは大体のところ決まっていましたので、その方面の本や論文(英文が主体) を読み漁って、レビューに起こしていました。とにかく読んで書くの繰り返しで、本当にこんな取り組み方で大丈夫なのか不安になりました。アーカイバルデータを用いた定量分析とインタビューによる定性調査をやる予定にしていたのですが、その切り口がなかなか思い浮かばない。だからレビューすれば何か出てくるのではと思ってやっていました。結果的にはそのやり方でよかったと思っています。RQの建て方も変わったし、フレームワークもレビューのおかげで形になったようなものです。修論は、「サラリーマンのど根性を見せてやれ」という教官の温かい励ましでなんとかものにできたようなものです。納期最後の追い込みだけは負けてなかったと自負しています。


修了しましたが、ゼミ以外にも、私の指導教官以外の先生方とのお付き合いする機会もありまして、学びの機会が本当に増えた感じです。会社でセミナーや研修を受けることも以前は多かったのですが、最近はMBAで学んだことよりもすごいものにはお目にかかりません。会社で幹部候補生の研修企画の宿題が出ていますが、弊社の幹部社員をMBAの先生方に見せたら、おそらく珍獣を見るようなものと思います。一度相談するのも手かな、なんて思っています。

2010年5月5日水曜日

ストーリーとしての競争戦略(楠木) 読み終わりました

一気に読んでさわやかな読了感でした。かなりお勧めです。
この本のいいところは、実はまえがきと第1章。ビジネスなんて理論じゃない、というフレーズ。何度も聞いて、何度も聞きあきて、それでも堂々とそれを言う連中。現実が理屈じゃないのは分かり切っているが、それを盾に勉強しない輩。そういう連中に理屈が大切であることを平易に説明している。私も理屈は20%、理屈で説明できないことが80%という楠木先生のいうことに大賛成です。

人事考課者研修などをやると、決まって「そんな理屈はいらない。どういうときにそういう点数を与えられるのかを教えてほしい」という質問が来る。たとえば、マズローやハーズバーグあたりならまだ理解してもらえる。なぜなら、安物のビジネス書にも紹介されていて、聞いたことがあるから。しかし、もう少し深く、アダムスの衡平理論やブルームの期待理論などに言及すると、たちまち「そんな理屈は分からない」で済ませる輩が登場する。つまり、理屈は「つまらんもん」とすませて勉強しない。私からはいつでも、「こういう無味乾燥な理論は、さまざまなケースの共通項なので、共通で使えるところがあるはず。だから重要と考えている」といつも説明はするのですが、なかなか理解してもらえないところがあります。

戦略論にしても、外部講師を呼んで研修をすると、外部講師は「理屈じゃありませんから」なんて迎合する。楠木先生の本のよさは、ポジショニングだRBVだ、そういういわゆる経営学用語を使わなくてもそういう概念を理解できるように解きほぐしてあること。だから、これから「これを読め」と言いやすい。沼上先生の本は、ある程度知識があるとより面白いし、より深いところまで言及がある。楠木先生の本のよさは、沼上先生の本のよさとは違うよさです。中間管理職以上にはできれば両方、経営書を読んだことのない人はまず本書を読んでほしいと思う。

確かに、筋のいいストーリーが書ければ成功というのは、商社業界で言う「絵」と同じことなのだと思う。「自分で絵が描ける営業マンを目指せ」というのが担当者レベルに求めることだし、課長レベルには、自分の課の事業の「絵」が書けるように頑張らせる。1から10まで、仕入から代金回収までのプロセスにお客の競合相手や代替を考慮にいればがら、最適解を見つけさせる仕事。事業単位でも同じことなのだと感銘を受けました。

楠木建(2010)『ストーリーとしての競争戦略―優れた戦略の条件』東洋経済新報社
目次
まえがき
第1章 戦略は「ストーリー」
第2章 競争戦略の基本論理
第3章 静止画から動画へ
第4章 始まりはコンセプト
第5章 「キラーパス」を組み込む
第6章 戦略ストーリーを読解する
第7章 戦略ストーリーの「骨法10カ条」
注記
索引