2010年5月29日土曜日

戦略不全の論理(三品) 読み終わりました

この本、2年ぶりぐらいに読みましたが、やはり現代日本の経営戦略に関する書籍の代表作の一つとの意を強くしました。

最初、第一部では、とっつきやすいところから始め、売上高と営業利益率、次にコマツとキャタピラーの比較ケーススタディの定性的なアプローチを通じて戦略不全について考えさせる。
第二部では、そしてミクロ経済学の競争モデルをどのように応用するのか、という風に難度が少しずつ上がっていく。そして、売上高と営業利益率にもう一度立ち返って、ケーススタディと言えば定性的になりがちなところをあえて定量的に押さえ、戦略について考えさせる。
そして白眉の第三部。経営戦略がなぜ不全に陥るかの一つの解として、経営者を取り上げる。経営者の任期が戦略に、そして最終的に収益にどのように影響するかについて、三品先生のお考えが定量的な分析を通じて提示されていく。

この本のよさは、最初はとっつきやすく、少しずつ難度が上がっていくところです。ミクロ経済学(ビジネスエコノミクス)や統計学の基礎的な知識があるとさらに読みやすいのですが、そうでなくても読めるようには工夫してあるので、一般的ビジネスマンでも読みこなせます。

この本を読んで感じるのは、 右肩上がりの高度経済成長時代に入社し、キャリア形成期からマネジャー経験を重ねるころまでは、何もしないでも業績が伸びた時代の人物が、この不透明で混沌とした経済状況の中で会社のかじ取りをしていることに対する不安である。第二次世界大戦後、日本の第二の創業期とも言える時代に経営のかじ取りをしていた世代はすでになく、その次の次の世代ぐらいになっており、操業の苦しみは知らず、先人の遺産と環境でマネジャーをつつがなく過ごした経験しかない経営者に何が分かるのだろうか。こういう経営者ほど勉強していないし、MBA教育を否定する。かといって、「持論」をTheory in Practiceともいえるまでの説明力をつけていない。

経営の実際にあたって、基礎的な学問の素養と継続的なブラッシュアップは絶対に必要であると感じる。MBAをそのブラッシュアップのための機会ととらえると、私の場合は本当によかったと思う。

こういう「学び」を否定する人々がかわいそうです・・・。

三品和広(2004)『戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか』東洋経済新報社
目次
はしがき
第1部 戦略不全の実態
第1章 日本企業の戦略不全症
第2章 データに見る戦略不全
第3章 ケースに見る戦略不全

第2部 戦略とは何か
第4章 演繹的マクロ戦略論
第5章 昨日的ミクロ戦略論
第6章 大局的判断の戦略論

第3部 戦略不全の背景と処方箋
第7章 経営戦略の3要件
第8章 日本企業の経営者
第9章 戦略不全の処方箋

参考文献
索引

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