2010年5月5日水曜日

ストーリーとしての競争戦略(楠木) 読み終わりました

一気に読んでさわやかな読了感でした。かなりお勧めです。
この本のいいところは、実はまえがきと第1章。ビジネスなんて理論じゃない、というフレーズ。何度も聞いて、何度も聞きあきて、それでも堂々とそれを言う連中。現実が理屈じゃないのは分かり切っているが、それを盾に勉強しない輩。そういう連中に理屈が大切であることを平易に説明している。私も理屈は20%、理屈で説明できないことが80%という楠木先生のいうことに大賛成です。

人事考課者研修などをやると、決まって「そんな理屈はいらない。どういうときにそういう点数を与えられるのかを教えてほしい」という質問が来る。たとえば、マズローやハーズバーグあたりならまだ理解してもらえる。なぜなら、安物のビジネス書にも紹介されていて、聞いたことがあるから。しかし、もう少し深く、アダムスの衡平理論やブルームの期待理論などに言及すると、たちまち「そんな理屈は分からない」で済ませる輩が登場する。つまり、理屈は「つまらんもん」とすませて勉強しない。私からはいつでも、「こういう無味乾燥な理論は、さまざまなケースの共通項なので、共通で使えるところがあるはず。だから重要と考えている」といつも説明はするのですが、なかなか理解してもらえないところがあります。

戦略論にしても、外部講師を呼んで研修をすると、外部講師は「理屈じゃありませんから」なんて迎合する。楠木先生の本のよさは、ポジショニングだRBVだ、そういういわゆる経営学用語を使わなくてもそういう概念を理解できるように解きほぐしてあること。だから、これから「これを読め」と言いやすい。沼上先生の本は、ある程度知識があるとより面白いし、より深いところまで言及がある。楠木先生の本のよさは、沼上先生の本のよさとは違うよさです。中間管理職以上にはできれば両方、経営書を読んだことのない人はまず本書を読んでほしいと思う。

確かに、筋のいいストーリーが書ければ成功というのは、商社業界で言う「絵」と同じことなのだと思う。「自分で絵が描ける営業マンを目指せ」というのが担当者レベルに求めることだし、課長レベルには、自分の課の事業の「絵」が書けるように頑張らせる。1から10まで、仕入から代金回収までのプロセスにお客の競合相手や代替を考慮にいればがら、最適解を見つけさせる仕事。事業単位でも同じことなのだと感銘を受けました。

楠木建(2010)『ストーリーとしての競争戦略―優れた戦略の条件』東洋経済新報社
目次
まえがき
第1章 戦略は「ストーリー」
第2章 競争戦略の基本論理
第3章 静止画から動画へ
第4章 始まりはコンセプト
第5章 「キラーパス」を組み込む
第6章 戦略ストーリーを読解する
第7章 戦略ストーリーの「骨法10カ条」
注記
索引
 

2 件のコメント:

楠木建 さんのコメント...

編集者の方からの連絡でこのブログを知りました。
お読みいただきまことにありがとうございました。
今後ともご贔屓にお願いいたします!

seataku さんのコメント...

先生、直接コメントいただき感動しています!
ありがとうございました。
神戸の小川先生に本を紹介されまして、紀伊国屋でぶらぶらしているときに「これが先生がいうてた本やな」ってな具合で立ち読みし、「これや!」と衝動買いして、一気に500ページ読んでしまいました。ありとあらゆる場面で先生の本、「最近の一押し」と推薦しています。
長く残る本になってほしいと思っています。

ありがとうございました。