2010年9月29日水曜日

引っ越しの家財

この日曜日に引っ越し荷物を搬出し、27日(月)の昼から搬入しました。
あいにくの雨でしたが、20箱程度なので、1時間もたたずに終了です。持っていったものは本、PC、服、ゴルフ道具、自転車、それと次の住まいは狭いにも関わらず、家を建てたときに嫁はんに思いっきり嫌味を言われたエコーネスのストレスレスチェア を持って行きました。これは、ノルウェーに頻繁に出張に行っているころによく行っていたオールスンド(Aalesund)のショールームやで欲しいと思っていた椅子で、代理店だったシモンズから直販に交代するというタイミングで大安売りしていたときがちょうど家の新築時で、思い切って買ったのですが、嫁はんには「こんな椅子、場所とるだけ」とさんざん言われていました。替わりに嫁はんにはマッサージチェアを買ってもいいと伝えています。

月曜日の昼から家電製品の買い出し。冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、電子レンジ、オーブントースター、テレビを買うべく秋葉原へ。とにかくカネが飛んでいく。冷蔵庫は170リットルタイプが売り切れていたほかは、型落ちで安くなっている洗濯機。東京の方は値切らないそうですが、根っからの大阪人としては、当然値切りです。もともと7リットルの洗濯乾燥機なんて買う気ゼロでしたが、欲しいと思っていたもう少し小さいタイプの製品に「お湯とり機能」がないことが判明。そこで、安い機種を探すと、これが案外安い。「これ、こっちの製品のほうが機能が多いのに安いんですか?」という疑問からスタート。「値入が安い」とか適当なことを言うので、おもむろにカタログチェック。カタログに載っていない。「これ型落ちですやん。ほんならもうちょっと安せな」という一言で下げました。あとは、どれだけネゴしても安くならず、冷蔵庫に至ってはメーカー欠品なので無理とのこと。テレビは32型なんて買う気さらさらなかったが、これもなぜか4万円台で出ている製品があって、お持ち帰りでネゴするがこれも交渉不成立。まあ、22型よりも安いんでいいか、って思って買いました。

そして、これは家族には内緒ですが、いままで大学院時代も安物のデスクチェアで我慢して、腰痛に耐えて論文を書き上げました。何度か嫁はんの許可を得て4万円ぐらいのチェアを買う機会はあったのですが、我慢していました。単身赴任が決まってから、いままでどうしても手が出なかったハーマンミラーのアーロンチェアを買おうと決意していました。しかしネットで14万円弱はするこのチェアを買うのに躊躇していたところ、これの廉価版のアーロンチェアライトなら9万円弱と5万円ぐらい安い。前傾姿勢固定機能と肘掛調整がないだけなので、思い切ってAサイズ(小さい型)をネットで注文。 チェアなんて3千円ぐらいからあるのに、なぜ9万円か?やはり、よい椅子は疲れないからです。エコーネスはいい安楽椅子ですが、一人になって勉強できる環境なので、思い切って仕事感覚で打ち込めるものを購入してしまいました。一生ものと思います。

火曜日28日は、午前中は家電製品搬入(冷蔵庫は来週)して、カーテンを買いにカーテンの問屋をネットで探して訪問。既製品を買うのもオーダーするのもさほど値段が変わらないので、オーダーすることに。幅260cmx高さ210cm、135x110がそれぞれ1枚、90 x 90が2枚必要で、レースとカーテンで35,000円ほど。新築した時は1階リビングとダイニングだけで10万を軽く超えた。既製品のサイズを探してもらったがぴったりとしたものがなく、採寸に来てもらって作ってもらうことにした。

あとは、家具探し。家具は、ロンドン時代から御世話になり続けて20年になろうとしているIKEA(イケア、我が家では英語流でアイキア=「キ」にストレス と言っております)しかない。ロンドンでスーパーマーケットも閉まっている日曜日に唯一店を開けていたのがNorth Circular Road沿い、TESCOの横、NeasdenのTube近くのIKEAでした。そりゃ日本製の素晴らしい家具がよいのはわかりきっている。しかしIKEAの家具にするのは理由がある。
(1)本棚の素晴らしさ
IKEAのロングセラー本棚であるビリー。おそらく強度と値段を考えると一番パフォーマンスが高い。ロンドン、シアトル時代から使っている本棚5機、それと日本で購入した2機がそれぞれ自宅で活躍中です。 リビングには日本製の立派なのを新築時に入れていますが、それ以外はすべて本棚はこのシリーズにしている。
(2)デザインが許容範囲
シンプルなので許容範囲です。安いのはもっと安い製品を探すこともできますが、チャチでプアな感じがする。IKEAだと、それが薄まっている感じはします。
(3)リーズナブルな価格
決して最安値ではないが、そこそこ安い。耐久性とそこそこのデザインを考えると、リーズナブルである。

実は、家を探すときに、収納スペースが多いことと廊下があることを意識して探していました。廊下があれば奥行28cmのビリーなら展開できると思ったからです。そして、そういう家に住むことになり、IKEAの家具を入れまくっています。

BILLYシリーズの幅80cm x 高さ202cmを2機、食器棚代わりに40 x 202に扉をつけて1機。
箪笥としてPAXシリーズの幅100cm x 高さ 202cm x 奥行37cmに扉をつけて、ハンガーユニットやバスケットユニットをつけたものを購入。
ベッドは、狭い部屋の有効活用を考慮してロフトベッドにする。Tromsoeというシステムがあったので、これにマットレスを組み合わせて購入。これでベッドと机が一気に解決。外国のユニットのほうが1階の天井が高い(164cm。日本製は 140cm台が中心)ので使いやすい。

IKEAでは、全部自分でピックアップ(これで2,980円の節約)。これがいつも疲れる。普段は嫁はんがいるので苦労しないが、一人でやると疲れる。宅配サービスに出すと全部で280kg。疲れるはずです。製品は全部フラットパックなので、家で組み立てが必要です。IKEAなら付属の六角レンチ、ねじまわし、金槌があればほぼすべての組み立てはできるので、心配はしていません。

一旦大阪にも戻って、30日夜には東京に赴任し、1日朝から新しい職場に着任です。2日は家具類の集中搬入日にしています。

2010年9月19日日曜日

本は引っ越し荷物へ

一部の仕事で必要な本以外は、おもな専門書は引っ越し荷物に入りました。
何冊かは出してありますので、そういう本を読んでいきます。

引っ越しや仕事で忙しくなります。

経営理論偽りの系譜:マネジメント思想の巨人たちの功罪(フープス)読了しました

この本、なかなかおもしろかったです。

経営学の「大家」であるテイラーとそれに続くギルブレスとガントチャートのガント。テーラー派の経営コンサルのフォレット、ホーソン実験のメイヨー。経営者の役割のバーナード。日本でも知られたQCのデミング。そしてドラッカー。フォレット以外は、それこそ経営学の大御所中の大御所である。こういう言い方が適当かは別として、ショベルのテイラー、レンガ積みのギルブレス。そしてリレーのメイヨー。このブログでもご紹介したが、Taylor, F. W. (1911) The Principles of Scientific Management (有賀裕子訳『新訳 科学的管理法:マネジメントの原点』, ダイヤモンド社, 2009年)は、絶対に外せない古典。こういう大家に敢然と挑んでいく姿勢は評価できる。予備知識なくこの本を読むと、それこそ経営学を曲解してしまうと思うが、経営学の基礎的な知識と何事も盲目的に受け入れない批判精神がある人にとっては、違うパースペクティブで理論やその背景をとらえられる本としてお薦めできます。自分が知らない背景を歴史家が丹念に調べている(と思われる)。それぞれの登場人物の評価を厳しくつけているが、どのような「大家」でもそれを盲目的に受け入れてはいけないことを教えられる。

話は変わりますが、岩崎夏海(2009)『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』ダイヤモンド社 と言う本がはやってまだ売れているようです。私も読みました。ドラッカーのすそ野を広げる取り組みは評価しますが、いかんせん表現があまりにも幼稚で読むに堪えない。アマゾンの評価も二分されているようですが、ビジネスマンならダイジェストに満足せず、Drucker, P., F., (1973) Management: Tasks, Responsibilities, Practices. New York: Harper Collins. ピーター・ドラッカー(2008)『マネジメント:務め、責任、実践(4冊組)』訳 有賀裕子、日経BP社をぜひ読んでほしい。申し訳ないが、二流の読み物を読んで分かった気になっても仕方ない。新訳になって読みやすくなりました(これも意見が分かれるところです)。これを読んでから本書を読むと、断然本書を楽しめると思います。

ちなみに、参考文献がしっかりしています。この点では評価できます。

Hoopes, J., (2003) False Prophets: The Gurus Who Created Modern Management and Why their Ideas are Bad for Business Today. Cambridge, MA: Basic Books. 邦訳 ジェームズ・フープス(2006)『経営理論 偽りの系譜:マネジメント思想の巨人たちの功罪』有賀裕子 訳、東洋経済新報社
目次
謝辞
はじめに
Part1 科学的管理法
第1章 草創期のアメリカでの人材マネジメント
第2章 「悪魔」 フレデリック・W・テイラー
第3章 「技術者」 ギルブレス夫妻とガント
Part2 人間関係論
第4章 「楽天家」 メアリー・パーカー・フォレット
第5章 「心理療法家」 エルトン・メイヨー
第6章 ザ・リーダー チェスターバーナード
Part3 社会哲学
第7章 「統計学者」 W・エドワーズ・デミング
第8章 「道徳家」 ピーター・ドラッカー
むすび
解説 (神戸大 金井先生)
訳者あとがき
原注
索引

2010年9月11日土曜日

異動が決まりました

異動が決まりました。社内発表は昨日午後でした。
飲み会の予約が入り始めています。昨日、本日とも飲み会、明日も飲み会です。金が続くのだろうか・・・・。

人事なので、自分で自分の異動案を載せます。

2010年7月30日(金)午後4時30分 東京にて。

仕事が一段落して、ちょっと時間ができたときに「ちょっといいか?」と担当役員に呼び出された。こういう呼び出され方をするときにはロクなことがないのは、いままでの長いサラリーマン生活の中でよくわかっている。そのときも、何かしら嫌な予感がした。

「あなたは人事異動の直接の担当者なので、不意打ちするわけにもいかないから言っておく。すまんが異動してくれんか。異動先は経営企画室。経営企画室での仕事は 決まっていないが、まずはIRとかそういう関係になってくると思う。営業経験と人事の経験、駐在、それと説得力のある英語、加えて経営学の知識と、申し分ないと思う」。どこかで同じようなことがあった。それも3回も・・・・。

そしてふと思った。重要な持ち物を変更すると、異動を告げられるケースが多い。
1回目は、ロンドンからの帰任。1995年4月末、乗っていた車の調子がずっと悪く、ようやくふんぎりをつけて買い替えの契約を決めたその週明けに日本への帰任を告げられた。
2回目は、シアトルからの帰任。2003年1月、携帯電話を防水型のPanasonicに変更したとたんに帰任の電話がかかってきた。
3回目は、営業から人事への再登板。国際ローミングができる携帯電話が出だしたころで、モトローラの携帯を会社に申請していたのがやっと到着。しかしアドレス帳の移動がうまくいかず、朝4時までかかって全部入れなおしたと思ったら、その日の午前中に異動を告げられた。
4回目は今回の異動。長らくお願いしていたブラックベリーを入手した途端に異動を告げられた。

だいたい5年サイクルぐらいで違う仕事をやるような人生で、日本に帰ってきてから7年が過ぎた。そろそろほかの土地で仕事をするタイミングと思っていたが、それが来たということであろう。人事は大学院を含めて相当勉強したし、いったん営業を離れ、また戻り、また人事になったので、人事で食っていこうと思って3年半。しかし、経営企画室はまったくよくわからない部署である。まあ、「なるようになる」だろう。

ただ、その日東京から最終の新幹線で大阪に戻り、タクシーに乗ると、Stevie WonderのIsn't she lovely? がかかっていた。次にDo I Doがかかったので、すぐにアルバムが分かった。大学に入ったころに爆発的に売れた Stevie Wonder (1982) Musiquarium I. Detroit MI: Motownです。柄にもなく、聞いてて泣けてきた。「なるようになる」と思いつつ、やっぱり自分が一所懸命やってきたことと違うことをやらされるやるせなさ。営業から人事に行けと命令されたときに近い気持ちです。

2010年9月9日木曜日

酔っ払い

恐ろしいことがありました。
いつも家の近所の駅の一つ手前で降りて歩きます。今日は前の部署の後輩と一緒に飲んだ帰りで、一つ手前の駅から歩いていました。家の近所の駅の踏切に差し掛かった時に、女性から「助けてください。あそこに人が入っています」と言われ見てみると、ホームから飛び降りて、線路をフラフラと歩いている酔っ払いが・・・・。そこで遮断機が下りました。「おい、おっさんなにしとんねん、はよよけろ」と大声で叫んで、遮断機越しに大きく手を振って運転士に知らせました。大きな警笛を鳴らして、電車が減速し、なんとか踏切の手前でストップしました。

そこからが大変です。女性2名と一緒におっさんに近づいて「大丈夫ですか」と言ったところ、完全に酔っ払っていて、「ちょっと待て」とかわけのわからないことを言い募っていました。電車の運転手の方も降りてきて、なんとかおっさんをどけようとするのですが、なかなかうまくいきません。私と二人ががりで、なんとか横におっさんを退避させようとしているときに、駅から駅員さんが2人やってきました。とにかく退避させるしかなく、横に退避させて電車を通して、そこから安全な場所に移動させようとしますが、わけのわからないことを喚いて、結局15分ぐらいかかって20メートルぐらいを動かして、なんとかなった次第です。

酔っ払って変なことをしないように気をつけねば・・・・。

2010年9月5日日曜日

経営理論偽りの系譜:マネジメント思想の巨人たちの功罪(フープス)

阪急六甲から六甲道に降りて行く途中に宇仁菅書店という古本屋があります。先日大学に行ったときにふらっと六甲道方面に歩いていたときに見つけて、立ち寄ってみました。哲学、美術、文学などの古本が多い中、経営書も若干は置いています。そこで見つけたのがHoopes, J., (2003) False Prophets: The Gurus Who Created Modern Management and Why their Ideas are Bad for Business Today. Cambridge, MA: Basic Books. 邦訳 ジェームズ・フープス(2006)『経営理論 偽りの系譜:マネジメント思想の巨人たちの功罪』有賀裕子 訳、東洋経済新報社である。 この本で紹介される人物は、経営学上非常に重要な貢献をしていると教わる。実際に至るところでこれらの人物の理論に出会い、そしてまさに「科学的管理法」としての経営学を学ぶ。しかし著者は、それらの「偉人」たちに立ち向かい、公然と批判するのである。このスタンスが非常に気になり、買ってしまった次第である。

積読になっていたのだが、これを今週は読んでみようと思う。ある意味異端の書である。

Blackberryを使う

会社から支給を受けたBlackberry、改めてすばらしいデバイスであることを再認識しています。7月に受け取ったので、現行機種のBold 9700ではなくBold 9000なのですが、それでも使いやすいと思います。9700ならもっと小型でパワフルだったのだと思うと、ちょっとさみしいですが・・・・。
iPhoneを持っていないので、比較はできませんが、自分として、Blackberryの機能で重要なのは:

1) メールがプッシュで入り、会社内のLAN経由とほとんど変わらない速度
ほとんど同時にメールが入ってくるのは素晴らしい。自分でメールを取りに行く必要がないので、放っておいてもドンドンメールが入る。私はメールの返信をできるだけ早くするのが取り柄と思っているので、とにかく早く返信できるのはうれしい。会社のメーラーはLotus Notesなのですが、プッシュするフォルダーを選択できるので、緊急度の比較的低い伝票や勤怠管理、社内情報などは取りに行かない設定にしてあるので、必要なメールだけが届く仕組みにしてあるところがいいと思う。

2) カレンダーとタスクもプッシュで同期
この20年以上のスケジュール管理は、システム手帳でやってきたが、カレンダーとタスクを同期できることを知って、システム手帳での管理はやめました。すべて会社のLotus Notesに入れてしまってあります。週に1度カレンダーを印刷してシステム手帳にファイルして一覧性を保っていますが、慣れてくればそんなことは必要なくなりそうです。今後は簡単なメモ帳代わりの手帳だけで済ませると思います。

3) 使えるキーボード
あんなに小さいキーボードですが使えます。バリバリメール打てます。ラップトップがあればあえてブラックベリーで打とうとは思いませんが、携帯でメールを打つのが苦手なので、本当に役立っている。タッチパネルでも行けるとは思うが、クリック感のおかげで打ち間違いが少なくなっています。HPの昔の電卓(たとえばHP17B=今でも使っている)のキータッチと共通するものがあって、非常に打ちやすい。PCでもキーボードにこだわるほうなので、この打ち易さは素敵です。

4)マイクロソフトオフィス、PDFが開けて編集できる
これは非常に重要な要素である。添付ファイルが相当量メールされてくる仕事で、今までの携帯メール(携帯電話から会社のメールを閲覧することができる)では、添付ファイルは見ることができません。そこで、ブラックベリーなら閲覧可能です。添付されているWord to Go, Sheet to Go, Slideshow to Goを使って見ることも可能です。 しかし、これだとパスワード保護されているファイルは閲覧できないので、20ドル弱払って、Documents to Goのプレミアムバージョンにアップグレードしました。これでも完ぺきとは言えませんが、生産性が格段と上がりました。ほとんどのファイルを開くことができ、しかも新規ドキュメントも作成できる優れものです。ちょっとした仕事ならサクサクこなせるところがすごい。通勤電車の中でワードを作成することもできるわけで、この機能が非常に重宝しています。また、今まで印刷してシステム手帳にファイルして活用していた情報も、エクセルやPDFファイルに落とし込んでおいて、必要な時に参照することが可能なので、ますますシステム手帳の必要性がなくなって来ると思います。30日のフリートライアルもあるので試してみてから購入してもよいと思います。シュガーシンクで会社のPCとファイルを同期させればもっと使いでがありそうなのですが、会社の重要ファイルをアップロードするのが不安なのでそこまでは踏み切れていません。

5) 仕事重視のルックス
iPhoneを振り回していると仕事の雰囲気は出ませんが、これなら仕事で机に置いていても全く違和感がありません。こういうストイックな雰囲気もいいです。

ただ、ガラパゴスケータイも持っています。使い道は、まず通話。海外出張もあるし、海外にも電話するので、3GとGSMが両方使える機種にしています。次に、国内線や新幹線の予約です。これらはケータイサイトのほうが数段優れています。最近のケータイなら通信速度が速いのでストレスになりません。iModeはそれ以外では使うことがほぼなくなりました。それと、ANAでもJALでも携帯電話のアプリのおかげで、そのままセキュリティを通過できるので、これはこれで大変便利です。ですから、Blackberryはメール受信器兼PIM機能の付いたちょっとしたハンドヘルドコンピュータとして割り切って、通話やiModeを必要とするところは日本の携帯電話を使っています。仕事優先でケータイを使われている方なら、ブラックベリーはかなりお勧めです。

2010年9月4日土曜日

MBA論文審査会

今日4日と来週11日は、神戸大学大学院経営学研究科専門職学位課程現代経営学専攻、つまりMBAプログラムの専門職学位論文の審査会です。今日がマーケティング、管理会計、財務会計の方々、11日はHRM(人材マネジメント)系とOB(組織行動)系の方々のようです。審査を受ける方々皆さんにとって実りある1日であることを祈っています。

今でも、冷や汗ものだった昨年の審査会のことを思い出します。私の時の副査は、今年の3月に退官された坂下昭宣教授(現流通科学大学教授)、それと同じく退官された桑原哲也教授(現福山大学教授)でした。やり取りの重要なところはよく覚えているぐらい貴重な体験でした。

私はグローバル経営をベースに論文を書きましたので、発表後、まずは桑原先生から質問を受けました。先生からは先行研究のレビューが緻密であるという話から先行研究について質問され、最後に、グローバル経営をやると必ず出てくるHeenan & Perlmutterの「EPRG」理論について、「本当にこんな段階を経て発展すると言えるのか」という通説に対する自分の考えを答えるような凝ったキラーパスがでた。「おそらく段階を経て発展するというパールミュッターの考えよりも、取り扱う商品や外部環境、また進出国の状況などによって、コンティンジェントに選択されるのだと考えたほうが合理的であると考えています」と、なんとか答えて桑原先生の質問は終了した。

次に、坂下先生からおもむろに、「この論文は、単にに垂直統合と水平展開について書いただけではないのか」という強烈なボディーブローが飛んできた。そういう一面はあるのだが、「単にそうではなく、取引プロセスが市場で行われずに組織の中で取引が起こるメカニズムについて考察しました」といった応酬が何度かあり、極めつけが「それなら、このフレームワークはおかしくないか。矢印が明らかに逆だし、変数も問題がないか」という力石徹が矢吹丈から受けたテンプルへのパンチのような一撃が来た。因果関係がおかしい、つまり論文として疑問であるという痛烈な批判であった。フレームワークについては何度も検討して、仮説の構築でも何度も議論を重ねたが、やはり詰めが甘いところが出てしまった。「因果関係についてのご指摘ありがとうございます。フレームワークでの変数と因果の関係が整理されていません。今後の研究においては十二分に気をつけます。重ねてお礼申し上げます」というのがやっとであった。その後もフレームワークに関する指導を受けて審査会は終わった。

フラフラだった。「落ちたな」と一瞬は思った。周りに聞くと「うまく話していた」というので、ちょっと気を取り直して、自分の論文をもう一度読んでみると、確かにフレームワークがうまくフィットしていない。論文全体としての結論には問題はないと思ったが、こういう重大なところがきちんとできていないと論文にならないということを学んだ貴重な1日でした。審査会終了後、主査(指導教官)に意見をお伺いしたところ、「坂下先生の指摘はさすがですね」と言われてしまった。 いまでもこういう論文で相談を受けたり意見を求められる時は、フレームワークは単なる相関図ではなく、因果関係を説明するためのものなので、因果関係に関係のない要素を書かずに、変数間の関係に絞ってフレームワークを書くほうが説得力がある、と説明しています。それは当然のことながら数式でも表現できるはずでもある。これから論文を書かれる方は、田村正紀(2006)『リサーチ・デザイン:経営知識創造の基本技術』白桃書房を読まれて因果関係や変数といった概念をおさらいされればよいと思います。ほかにもこの手の本を読んでから取りかかられるとよいです(この辺は先生方が教えてくださいます)。

神戸MBAのよさは論文を執筆するプロセスとその集大成としての審査会です。執筆した論文を10分間でわかりやすく説明する能力は、社会人としての必須能力ではないでしょうか。社会人とはいえ、また専門職課程とはいえ、論文をきちんと書くプロセスから学ぶことが非常に多いと改めて感じています。自分で決めたテーマにそって説得力のある論文を書く過程で思考を深くしていくことが、実務では減っていますし、だからこそ、そういう機会を持って、思考能力を高めていくことに意義があると感じます。以前三品先生に尋ねられた時も「論文書かずして何もわからない。40中盤のサラリーマンなら実務を教えてもらうためではなく、もっと理論をしっかりと身につけたいと思っているはずで、そのためには論文執筆が効果的」と話した通りです。

今年のM2の皆様の論文合格をお祈りしております。

「バカな」と「なるほど」(吉原)

この本、様々なところで大反響です。1988年の本なのですが、今読み返しても示唆に富んでいます。
私が最初にこの本を知ったのは、神戸大学の小川先生のTweetです。誰もが「バカな」と思うことに実は合理性があって、後で成功したときにそのストーリーを聞くと「なるほど」と言える合理性があるという話です。次にこの本について言及されているのが一橋大学の楠木先生。楠木先生の本自体がこの本を底本にしたのではないかと思えるぐらいです。その次は神戸大学の金井先生。そして同じく神戸の三品先生。そして極めつけは、神戸の加護野先生がこの本について述べられたことで、この本のすごさが分かってもらえると思う。

この本にも紹介されているのが山代温泉のホテル百万石。田んぼのど真ん中に1200坪の土地を買い、600畳の大広間がある旅館を建設するという、当時としては考えられないだれもが「バカな」というやり方。しかし、客が続々と入りだしてなぜそういうことをしたかを聞くと、バスや自家用車の時代であることやコンベンション需要の高まりなど、みんなが「なるほど」といえる戦略が素晴らしい戦略であるということ。これが吉原先生では「バカなとなるほど」ですし、楠木先生だと「キラーパス」なのですね。
久々に読みなおすと、薄い本ですが非常に分かりやすい。ケースが古いのが難点だが、イビデン、ホテル百万石、ホソカワミクロンなどの話は今でも新しく読めます。

非常に残念なのですが、この本、アマゾンで古本を買うのは不可能です。古本屋で見かけたら即お買い上げしてください。図書館で調べてあれば読んでください。少なくとも神戸大学、大阪市中央図書館にはあります(大阪府立には残念ながらありません)。丹念に探さないとない本です(私もコピーがあるだけです)。ぜひご一読ください。ネタの料理の仕方が上手ですね。

吉原英樹(1988)『「バカな」と「なるほど」:経営成功の決め手!』同文舘

目次
はしがき
第一部 常識破りの発想
1 バカなとなるほど 成功する戦略の二大条件
2 答えを見ながら答案を書く 創造的戦略の発想法
3 べき論より予測論を 経営者の先見力強化法
4 ダブダブの洋服の戦略メッセージ 戦略を効果的に伝える方法
5 マイナス情報に情けをかけよう
6 組織慣性との戦い 企業変身の最強の敵
7 人事スペシャリスト不要論 野村証券の「非」常識な人事部
8 から元気のリーダーシップ
9 社内事情より社外事情を優先 野村證券のキープヤングの人事
10 女が分からないで経営ができるか
11 人づくりは人選びから
12 計画のグレシャムの法則
第二部 常識破りの戦略
1 多角化を成功させるキーファクター
2 非常識な戦略で活路を開く
3 中堅企業海外進出の成功の条件
4 夢と技術力と余裕 海外進出成功のキーファクター
5 安全運転は新事業の敵
初出一覧

2010年9月2日木曜日

旅行で読んだ本② 『経営の精神』(加護野)

組織認識論を読む気にならないので、最近加護野先生が出された加護野忠男(2010)『経営の精神:我々が捨ててしまったものは何か』生産性出版 も持っていった。北海道に単行本を3冊持っていき、2冊読んだことになる。組織認識論とは違って、どちらかというと啓蒙書というか経営随筆のような本で、サッと読めてしまいます。しかし、最近のたとえば楠木建(2010)『ストーリーとしての競争戦略―優れた戦略の条件』東洋経済新報社といった経営書と比べると古さを感じてしまう。

加護野先生をはじめとして、野中先生や伊丹先生の本には、基本的な考え方がよく登場する。経営の精神も同様で、ヴェーバーやゾンバルトを引きながら松下幸之助や稲盛和夫の経営の精神をひも解いていくところについては非常によく理解できるし、近江商人時代にも同じ精神が息づいていたというところには共感を覚える。ここまでなら、「非常にコンパクトにまとまった良書です。ぜひ読みましょう」という感想で終了です。

しかし、韓国人の「ケンチャナヨ」、まじめで従順なドイツ人、ユニークなイタリア人といった話に代表されるステレオタイプ、極めつけは「便所掃除の経営学」の話が出てきて、申し訳ないが非常に読みづらい(というかウザい)。少なくとも私は「なんや」という感を強くした。これらの「蛇足」がこの本を台無しにしてしまっている。これらの話を取り除いてみるとおそらく非常にすっきりとした読み物に仕上がると思う。逆にいえば、この本のターゲットと思われる50代よりもお年を召された経営者の方々には分かりやすいのかもしれず、セグメンテーションが機能しているのか?

神戸MBAの大先生で、お考えを直接伺ったり、お話を聞いたりしていると非常に面白くわかりやすい。また、最近のIFRSやコーポレートガバナンスのあり方に関するお考えも日本の経営学の立場から共感できる。ですから、余計に「蛇足」が惜しまれます。

目次
はじめに -日本企業から失われたもの
第1章 企業の存在意義を考える
第2章 三つの経営精神
第3章 経営精神の実践
第4章 経営精神の劣化
第5章 経営精神の復興

旅行で読んだ本 『戦略的思考とは何か』(ディキシット&ネイルバフ)

1か月ほど前に加護野忠男(1988)『組織認識論:企業における創造と革新の研究』千倉書房を読む決心をしたのですが、読み始めるとあまり面白くないのでいつも読むのをやめてしまう。久々に難渋する本です。

たとえば、組織認識論の前に読んでいたKuhn, T., S.(1962) The Structure of Scientific Revolutions. Chicago: The University of Chicago Press. 邦訳 トーマス・クーン(1971)『科学革命の構造』中山茂 訳、みすず書房なんか面白く読めたのに、どうしても組織認識論が読みすすめていけない。もっと難解な本でもそれほど苦労をせずに読めているのになぜ読めないのだろうか。

旅行に持っていけば読めるかと思い、重たい本を持っていったが、結局読む気が起きない。そんなに難解な文章とも思わないのだが、ダメです。もう少し落ち着いて読むことにします。


8月25日から29日まで北海道に家族旅行に行っていました。飛行機で旭川まで飛んで、旭山動物園、そして札幌、小樽、定山渓を回って、トワイライトエクスプレスに乗って大阪まで帰ってくるという旅行です。相当散在しましたが、子どもや嫁はんが楽しんでいる姿を見るとホッとします。結局、組織行動論を読まずに読み返していた本が Dixit, A. K. and Nalebuff, B. J. (1991) Thinking Strategically: the Competitive Edge in Business, Politics and Everyday Life. New York: W. W. Norton & Co. 邦訳 アビナッシュ・ディキシット、バリー・ネイルバフ(1991)『戦略的思考とは何か:エール大学式「ゲーム理論」の発想法』菅野隆、島津祐一 訳、TBSブリタニカ です。一晩で330ページを一気に読んでしまいました。この本も原書が半額以下なので、原書がお勧めですが、日本語でも十分に楽しめます。神戸MBAのビジネスエコノミクス応用研究の副読本でしたが、ゲーム理論の書籍の中では最も分かりやすい1冊と思います。数式がほとんど使われておらず、ビジネスマンでも一気に読みこなせます。囚人のジレンマやミックス理論などのゲーム理論の基本から、ケースを使った発展的内容までほぼ網羅されています。アメリカの教科書なのでケースがアメリカ人なら分かりやすいケースですが、日本人でも十分読みこなせます。1991年の本とは思えないぐらいに新鮮でビビッドです。ぜひお勧めします。ただ、分かりやすいので、一読して「分かった気になる」可能性はありますので、しっかりと読んでほしいと思います。

目次
著者まえがき
日本版への序
第1部 ゲーム理論の基本コンセプト
第1章 戦略ショートショート
第2章 交互行動ゲーム
第3章 同時進行ゲーム
第2部 基本コンセプトの発展
第4章 囚人のジレンマ
第5章 戦略活用行動
第6章 実行の確約
第7章 予測不能性
第3部 ゲーム理論の戦略的状況への活用
第8章 瀬戸際戦略
第9章 協力と協調
第10章 投票
第11書 交渉
第12章 誘因(インセンティブ)
第13章 ケーススタディ
訳者あとがき