2010年9月19日日曜日

経営理論偽りの系譜:マネジメント思想の巨人たちの功罪(フープス)読了しました

この本、なかなかおもしろかったです。

経営学の「大家」であるテイラーとそれに続くギルブレスとガントチャートのガント。テーラー派の経営コンサルのフォレット、ホーソン実験のメイヨー。経営者の役割のバーナード。日本でも知られたQCのデミング。そしてドラッカー。フォレット以外は、それこそ経営学の大御所中の大御所である。こういう言い方が適当かは別として、ショベルのテイラー、レンガ積みのギルブレス。そしてリレーのメイヨー。このブログでもご紹介したが、Taylor, F. W. (1911) The Principles of Scientific Management (有賀裕子訳『新訳 科学的管理法:マネジメントの原点』, ダイヤモンド社, 2009年)は、絶対に外せない古典。こういう大家に敢然と挑んでいく姿勢は評価できる。予備知識なくこの本を読むと、それこそ経営学を曲解してしまうと思うが、経営学の基礎的な知識と何事も盲目的に受け入れない批判精神がある人にとっては、違うパースペクティブで理論やその背景をとらえられる本としてお薦めできます。自分が知らない背景を歴史家が丹念に調べている(と思われる)。それぞれの登場人物の評価を厳しくつけているが、どのような「大家」でもそれを盲目的に受け入れてはいけないことを教えられる。

話は変わりますが、岩崎夏海(2009)『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』ダイヤモンド社 と言う本がはやってまだ売れているようです。私も読みました。ドラッカーのすそ野を広げる取り組みは評価しますが、いかんせん表現があまりにも幼稚で読むに堪えない。アマゾンの評価も二分されているようですが、ビジネスマンならダイジェストに満足せず、Drucker, P., F., (1973) Management: Tasks, Responsibilities, Practices. New York: Harper Collins. ピーター・ドラッカー(2008)『マネジメント:務め、責任、実践(4冊組)』訳 有賀裕子、日経BP社をぜひ読んでほしい。申し訳ないが、二流の読み物を読んで分かった気になっても仕方ない。新訳になって読みやすくなりました(これも意見が分かれるところです)。これを読んでから本書を読むと、断然本書を楽しめると思います。

ちなみに、参考文献がしっかりしています。この点では評価できます。

Hoopes, J., (2003) False Prophets: The Gurus Who Created Modern Management and Why their Ideas are Bad for Business Today. Cambridge, MA: Basic Books. 邦訳 ジェームズ・フープス(2006)『経営理論 偽りの系譜:マネジメント思想の巨人たちの功罪』有賀裕子 訳、東洋経済新報社
目次
謝辞
はじめに
Part1 科学的管理法
第1章 草創期のアメリカでの人材マネジメント
第2章 「悪魔」 フレデリック・W・テイラー
第3章 「技術者」 ギルブレス夫妻とガント
Part2 人間関係論
第4章 「楽天家」 メアリー・パーカー・フォレット
第5章 「心理療法家」 エルトン・メイヨー
第6章 ザ・リーダー チェスターバーナード
Part3 社会哲学
第7章 「統計学者」 W・エドワーズ・デミング
第8章 「道徳家」 ピーター・ドラッカー
むすび
解説 (神戸大 金井先生)
訳者あとがき
原注
索引

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