2010年9月2日木曜日

旅行で読んだ本② 『経営の精神』(加護野)

組織認識論を読む気にならないので、最近加護野先生が出された加護野忠男(2010)『経営の精神:我々が捨ててしまったものは何か』生産性出版 も持っていった。北海道に単行本を3冊持っていき、2冊読んだことになる。組織認識論とは違って、どちらかというと啓蒙書というか経営随筆のような本で、サッと読めてしまいます。しかし、最近のたとえば楠木建(2010)『ストーリーとしての競争戦略―優れた戦略の条件』東洋経済新報社といった経営書と比べると古さを感じてしまう。

加護野先生をはじめとして、野中先生や伊丹先生の本には、基本的な考え方がよく登場する。経営の精神も同様で、ヴェーバーやゾンバルトを引きながら松下幸之助や稲盛和夫の経営の精神をひも解いていくところについては非常によく理解できるし、近江商人時代にも同じ精神が息づいていたというところには共感を覚える。ここまでなら、「非常にコンパクトにまとまった良書です。ぜひ読みましょう」という感想で終了です。

しかし、韓国人の「ケンチャナヨ」、まじめで従順なドイツ人、ユニークなイタリア人といった話に代表されるステレオタイプ、極めつけは「便所掃除の経営学」の話が出てきて、申し訳ないが非常に読みづらい(というかウザい)。少なくとも私は「なんや」という感を強くした。これらの「蛇足」がこの本を台無しにしてしまっている。これらの話を取り除いてみるとおそらく非常にすっきりとした読み物に仕上がると思う。逆にいえば、この本のターゲットと思われる50代よりもお年を召された経営者の方々には分かりやすいのかもしれず、セグメンテーションが機能しているのか?

神戸MBAの大先生で、お考えを直接伺ったり、お話を聞いたりしていると非常に面白くわかりやすい。また、最近のIFRSやコーポレートガバナンスのあり方に関するお考えも日本の経営学の立場から共感できる。ですから、余計に「蛇足」が惜しまれます。

目次
はじめに -日本企業から失われたもの
第1章 企業の存在意義を考える
第2章 三つの経営精神
第3章 経営精神の実践
第4章 経営精神の劣化
第5章 経営精神の復興

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