2010年6月17日木曜日

知的創造企業(野中・竹内) 読了しました

久々に、野中郁次郎、竹内弘高(1996)『知的創造企業』(梅本勝博訳)東洋経済新報社を読みました。事例が古いのは否めませんが、ぜひ読んでみてほしい。西洋哲学における知とは、形式的でかつ体系的。我々がいままで学んできた知は、この系統に属するだろう。一方で、日本的な知の系譜も存在するという。「人間と自然を一体化」する基本的志向は、西洋的な知とは対極であろう。たとえば、習慣に基づく「勘」、体で覚えこんだ技術、頭の中にだけあるノウハウなど、形式知になっていない暗黙知に注目されておらず、暗黙知から形式知を作り出すということまでに及んでいないと説く。

そして、知識創造のプロセスは、有名なSECIモデルにより、スパイラルアップして進行していく
共同化(Socialization) 暗黙知から暗黙知へ  各人の経験の共有化
形式化(Externalization) 暗黙知から形式知へ 共有した暗黙知を言語で表現する
連結化(Combination) 形式知から形式知へ  各人の形式知をマニュアルなどで一緒にする
内面化(Internalization)形式知から暗黙知へ 形式知を各人の内面で暗黙知化する

といった感じで、ホンダシティ、松下のホームベーカリー、キャノンのミニコピア、シャープの緊プロなどの事例を通じてそれを示していく。

この本のいいところは、単なる成功事例の羅列ではなく、序文にあるように組織的知識創造の一般理論を構築しようとする試みであること。理論志向の強さは、第2章の知識と経営で展開される西洋哲学の地に関する系譜、そして日本文化への言及で表されている。RBVの基本テキストであるだけに、内部資源にほぼ限定された議論であるが外部環境の影響の議論を排していることから、より理解しやすく仕上がっている。

筆者は、第4章から読めばよいというが、私としては、すべてのビジネスパーソンは、第2章と第3章を熟読してほしいと思う。

Nonaka, I. & Takeuchi, H. (1995) The Knowledge-Creating Company: How Japanese Companies Create the Dynamics of Innovation. Oxford, UK: Oxford University Press. 邦訳 野中郁次郎、竹内弘高(1996)『知的創造企業』梅本勝博訳、東洋経済新報社
目次
序文
謝辞
第1章 組織における知識―序論
第2章 知識と経営
第3章 組織的知識創造の理論
第4章 知識創造の実例
第5章 知識創造のためのマネジメント・プロセス
第6章 新しい組織構造
第7章 グローバルな組織的知識創造
第8章 実践的提言と理論的発見
日本語版へのあとがき
参考文献
索引

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