2010年6月25日金曜日

知識創造の方法論(野中・紺野) 読了しました

野中郁次郎、紺野登(2003)『知識創 造の方法論:ナレッジワーカーの作法』東洋経済新報社を久々に読みました。この本は、通読すると非常に勉強になる。

第一部の「知の方法論の原点」では、プラトンに始まる哲学、つまり著者のいう「知の型」=枠組みや方法論としてとらえるための哲学について概論していく。プラトン、デカルト、デューイ、ロック、カント、西田、といった知の巨人たちの理論が解かれていく。もう少し高いレベルで概観したければ、やはりRussel, B., (1946) History of Western Philosophy, London: Routridge.(市井三郎訳『西洋哲学史:古代より現代にいたる政治的・社会的諸条件との関連における哲学史(3冊組)』みすず書房)がやはり金字塔と思えます。ちなみに、1950年ノーベル文学賞受賞作!なんでやねん、って思いますが、もし余裕があれば、西洋哲学史も買って、野中先生が引いている哲学者のところをじっくり読むと、本当によくわかると思います。 経営学をやるにしても、物事の考え方を学ばないとなかなか入ってこないことが修論やっているころに分かりました。

第二部「社会科学にみる知識創造の知」では、いわゆる社会学の命題、「行為」か「構造」か、を見ていきます。構造の代表はデュルケーム。行為の代表はヴェーバー(ウェーバーと野中先生は書いておられるが、雰囲気があるのはこちらか?)。そして出てくるのは当然「プロ倫」。そして「意味」。レヴィ・ストロース代表のフィールドワークと構造主義。そして出てくるのが有名なホワイトのストリートコーナーソサエティ。そして現象学のフッサールに至る。最後にはやはり、データによる実証主義の限界と個別事例によるメカニズム解明にいたる沼上幹(2000)『行為の経営学:経営学における意図せざる結果の探究』白桃書房への言及がある。推論の方法について、社会学的な見地から推し進めている。論文を書くときに必要な作法がしっかりと書かれていることもプラスポイント。こんなもんいるんかいな、って思いますが、読んで咀嚼して損はない。

ここまでは、いわゆる修論の組立て構造についてと考えればよいが、実務家にはいささか退屈と思う。しかし、第三部「コンセプトの方法論」からは理論嫌いな実務家でも十二分に楽しめると思います。コンセプト、つまり概念の問題で、現場をよく観察し、その意味を見出して概念化し、モデル(理論)化するというプロセスについて解かれている。そして、それらがビジネスのケースとしてどのようにApplyされているかを提示している。

第一部と第二部はMBA学生必読。社会人のダルな頭に喝を入れる。といっても、野中郁次郎、竹内弘高(1996)『知的創造企業』(梅本勝博訳)東洋経済新報社をしっかりと読めばこの本までいるか、とも思えます。まず、知的創造企業を熟読して、物足りなければこれをよむスタンス。全然物足りなければ西洋哲学史に行けばどうでしょうか。いい本です。

野中郁次郎、紺野登(2003)『知識創 造の方法論:ナレッジワーカーの作法』東洋経済新報社
目次
まえがき
序 知の方法を身にまとう
1 新たな経営の知
2 ナレッジワーカーの時代

第1部 知の方法論の原点
1 哲学に見る知識創造の知
2 知識創造理論で見た哲学の知の壁
3 知識創造プロセスと弁証法のダイナミズム

第2部 社会科学に見る知識創造の知
1 科学の知の方法論の意味合いとその変遷
2 社会学の知のアプローチ―構造・行為・意味・統合
3 潜在的メカニズムの発見へ
4 新たな経営の知に向けて―綜合の知

第3部 「コンセプト」の方法論
1 コンセプトとは何か
2 「観察」の方法論―アイデアの源泉としての経験
3 「概念化」の方法論―意味の発見と形成
4 「モデル化(理論化)」の方法論
5 「実践化」の方法論
6 日常的行為へ

第4部 経営と知の方法
1 企業の知の型(組織的知識創造)
2 ナレッジ・リーダーシップ


参考文献
索引

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